におい

元はと言えば、あなたが悪いんだ。私を好きだと言ってくれたクセに、いろんな男に色目を使って。

好きだと言ってくれたとき、凄く嬉しかった。その時から、私はずっとこの人に付いていくって、決めていた。それなのに、あなたは裏切ったの。

あの日、一緒の映画を見てくれたのは、私を勘違いさせるため?あの時、恋人つなぎしてくれたのは、私を嘲笑うため?あの夜……あぁ、あなたの匂いが鼻に突き刺さる。

最近、あなたの匂いが強くなってきた。これは、暑い日が続いたから?それとも、あなたを想い続けたおかげ?饐えた匂いなんて、あなたには似合わない。そろそろ洗ってあげないと。


ブラッシングするたびに、あなたの髪が抜けていく。

一蓮托生だと信じていたものにすら見放されて、かわいそう。でも、信じていたものに裏切られたのは、私も一緒。あの時の痛み、あなたにも分からせてあげる。

ごめんね、痛いよね。でも、私はもっと痛かった。辛かった。今なら分かるよね?今なら分かってくれるよね?


きっと、瞳もあなたの事を見限ったんだと思う。腐った柿が枝から落ちるように、ゴロリと音をたてて逃げ出した。大きくて可愛かったのに、惨めな最期だった。あなたに執着しすぎたせいで、底意地の悪さが移っちゃったのかもね。

溢れ落ちた眼球は、饅頭のようにじっとりと濁っていた。あなたにこびり付いていたときは、深海のように透き通って、涙の雫でぎらぎら光っていたのに。たくさんの男を篭絡した水晶玉も、しょせんは虎の威を借る狐に過ぎなかったのね。

熟れた果実が私を見つめている。私に食べて欲しそうに、見つめている。がぶり。食べた事ないけれど、柘榴って、こんな味なのかな。


あなたがいつも食べていたケーキカステラも、たくさん食べさせてあげた。あなたの好きな、男とやらの写真もたくさん集めてあげた。シャンプー、リンス、ボディーソープ。使ったのは全部、あなたのお気に入り。

それなのに、どうして私の臭いに染まっていくの?

どうして、私が好きだった、あの頃のあなたに戻ってくれないの?

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